
大学卒業後、教員としてバスケットボール指導に従事。アメリカでの学びを機に、2008年よりスポーツを通じた地域活性化活動を開始し、2013年に熊本ヴォルターズを始動。一度離れるも、2024年3月に復帰しクラブを牽引している。
https://www.volters.jp/
Bリーグに所属するプロバスケットボールチームで今年で14年目を迎えます。私たちの最大の特徴であり強みは何と言っても熱狂的なファンやブースターの皆様の存在です。立ち上げ当初の3年間はNBLに所属し、6勝48敗など非常に苦しいシーズンを経験しました。しかし、Bリーグが誕生した初年度にはB2で44勝16敗という成績を収めました。そこから現在に至るまで「B1に上がりそうで上がれない」という悔しい時期を過ごしていますが、どんな時でもファンの方々は熱い声援を送り続けてくださっています。何もないゼロの状態から地域の皆様と一緒に作り上げてきたクラブだからこそ、この強固な絆が私たちの最も誇るべき財産となっています。
私はもともと教員をしており、大学卒業後もずっとバスケットボールの指導に携わっていました。次世代の子供たちに自分の学んだことを伝えたいという思いから教職を選んだのですが、指導方法に悩んでいた時期に知人の誘いでアメリカへバスケットの勉強に行きました。そこで目にしたのは、日本とは全く異なる指導のあり方でした。「子供たちができないのは指導者の責任であり、できるようにステップアップさせるのが指導者の役割だ」と教わり、大きな衝撃を受けました。また、NBAの試合を観戦した際、2万人規模のアリーナに地域の老若男女が集い、地元のチームを応援して日々の活力を得ている姿を目の当たりにしました。「自分が受けたこの感動を熊本の人たちにも伝えたい、地域が元気になり人がつながる環境を作りたい」と強く思い、2008年から活動を始め、2013年のチーム始動へとつながりました。
立ち上げ当初は私自身がお金を生み出すことや稼ぐことに関する知識も経験も全くない状態でした。とにかく資金を集めなければとひたすら地域を回って営業活動を行いましたが、それでも資金は全く足りず、経営面では想像を絶する苦労の連続でした。情熱だけで突っ走っていた部分もあり、クラブを存続させるためのビジネスモデルが構築できていなかったのです。そのため何度も危機に直面し、そのたびに手探りで解決策を模索する日々でした。事業を継続させるためには、ただバスケットボールが好きだという思いだけでなく、しっかりとした経営基盤を作らなければならないという現実を身をもって痛感させられました。
あの地震でクラブは本当に潰れかけました。試合や練習どころではなくなり、存続の危機に立たされましたがその時に全国の皆様から温かい支援と多大なるご寄付をいただき、なんとか命をつないでもらうことができました。その経験を通じて「もう二度とこんな苦しい思いはしたくない、せっかく助けていただいたクラブの命を絶対に次へつなげなければならない」という強い覚悟が芽生えました。そこから経営やお金に関する猛勉強を始めました。稲盛和夫さんの「盛和塾」という経営者の勉強会が熊本にもあったため、そこに入会させていただき、経営者としての心構えや組織運営のあり方を根本から学び直しました。地震という大きな試練と全国からの支援が、私を経営者として成長させ、クラブの基盤をより強固なものにするための最大の転機となりました。















私たちは熊本大学や桜十字グループと3者での連携協定を結んでおり、様々な実践的な取り組みを行っています。例えば、私たちが大学へ出向いてマーケティングの出前授業を行うだけでなく、学生の皆さんに実際のクラブ運営に関わってもらっています。学生たちがチームの戦力としてデータ分析やコーディングを担当したり、遠征に同行してベンチ裏でサポート業務を行ったりと実践的な学びの場を提供しています。また、試合会場ではエンターテインメント性を重視し、お客様の声を大切にした演出づくりに力を入れています。勝敗といったスポーツの枠を超えて、アリーナに来るだけで楽しく、元気になれる空間を提供することが私たちの重要な使命だと考えています。
最大の目標はもちろんB1への昇格ですが、それと同時に「熊本から世界へ」というグローバルな視点での展開も強く推進しています。すでに子供たちをサクラメントやラスベガスへ派遣する取り組みを行っているほか、台湾とは4年にわたり相互に行き来しながら試合や交流事業を実施しています。さらに昨年からはインドネシアのチームとも提携を開始しました。今後は、様々な国の方々に熊本へ来ていただき、バスケットボールを通じた異文化交流の大会などを開催したいと考えています。チームの勝利を追求することと、ビジネスとしての事業を成長させること。この両輪をしっかりと回しながら、勝敗だけでは測れない新たな価値を創造し、熊本から世界へ誇れるクラブへと成長していくことが私たちの今後の大きな展望です。
人生には苦しいことや逃げ出したくなる瞬間が必ずあります。しかし、私自身がそうであったように多くの人の支えがあるからこそ今があります。どんな時でも一つ一つの出会いに感謝できる自分でいてください。そして、失敗を恐れることなく自らの情熱を信じて果敢に挑戦し続けてほしいと願っています。