FM791
村上 健
素材から、新しい価値をつくる。
八代から広がる
村上産業のものづくり
Ken Murakami
村上産業株式会社 | 代表取締役

1982年熊本県八代市生まれ。2001年バンタンキャリアスクール卒業。洋服好きから関東のアパレル業界で働く。23歳で帰郷し1910年創業の家業へ入社。畳表卸売業から独自の物づくりを行う製造業へのシフトを主導し、現在は代表取締役を務める。
複数の特許取得を重ねながら、イグサをはじめとした植物を一つの「素材」として捉え、従来の用途にとらわれない可能性を探っている。

http://www.murakami-t.co.jp
MY STORY

アパレルを志した20代。家業に戻り、ものづくりの道へ

Qなぜ当初はアパレル業界を志し、そこから家業である村上産業へ戻る決断をされたのでしょうか?
A

私は元々洋服が好きで、若い頃は関東へ出てアパレル関係で働きたいという憧れを抱いていました。親からも「家業を継ぎなさい」と言われたことはなく、将来イグサの業界に入る予定もありませんでした。そのため、関東で洋服に関わるアルバイトをしながら、自分の好きな道を模索していました。
転機が訪れたのは23〜24歳の頃です。父親から「事業拡大で法人が複数になるため、そのうちの1つを任せたいから戻ってこないか」と声をかけられました。当時は深く悩んだわけではなく、声をかけてもらったことをきっかけに帰郷を決めました。2005年頃に入社し、そこから初めて家業の仕事内容を把握する時間が始まりました。
それまでこの業界に入ることを前提にしていなかったこともあり、仕事を覚えながら「なぜこうなっているのか」「別の方法はないだろうか」と考えることは多かったと思います。

Q100年以上続いてきた卸売業から、製造業へと大きく舵をきられたきっかけは何だったのですか?
A

村上産業は1910年に創業し、私が4代目にあたります。3代目の時代までは、八代のイグサを使った畳表の卸売業をメインに展開していました。
ただ、卸売業では扱う商品の価値を自分たち自身でつくり、その魅力を直接伝えていくことには限界があります。また、価格競争に巻き込まれると販売価格の上限も決まってしまいます。
そこで、自分たちで独自の物づくりを行い、自分たち自身で商品の価値をつくる側になろうと考えました。建築や設計関係のお客様へアプローチし、オリジナルの製品を物件に直接導入する「製造業」へのシフトを決めました。
当初は経験も設備もなく、手探りで試作品をつくるところからのスタートでした。付加価値の高いものを生み出すことができれば、会社としての競争力だけではなく、原料であるイグサそのものの価値も高めることができます。それが結果として生産者や産地への還元にもつながっていけば、良い循環をつくれるのではないかと考えています。

 

MY STORY

長く蓄積されてきた知識を、今のものづくりに使う

Q他社にはない、村上産業ならではの強みやこだわりはどこにありますか?
A

私たちが最も大切にしている強みは、複数の特許取得に裏付けられた「発想力」や「想像力」を用いて事業を展開している点です。他社を真似するのではなく、他ではやっていないこと、できないこと、あるいは今まで世の中に存在しなかった新しいものを生み出すことにこだわっています。ただし、それは単なる思いつきによる斬新さではありません。長く続いてきた産業の中には、素材の扱い方や加工方法、構造、意匠など、長い時間をかけて蓄積されてきた多くの知識があります。昔の技術や意匠を紐解いてみると、今見ても非常に優れていて、理にかなっているものがたくさんあります。
そうしたものを、そのまま再現するというよりも、一度よく見て、考える。どこに本質があるのか、なぜこの構造になっているのか、別の用途に置き換えることはできないか。そうやって自分たちなりに捉え直し、現在のものづくりにつなげています。
出来上がったものが従来のイグサ製品とはまったく違うものに見えても構わないと思っています。大切なのは、新しく見せることそのものではなく、積み重ねてきた知識や技術を使いながら、今の時代に新しい価値を生み出すことだと考えています。

Q熊本県、特に八代市という拠点で事業を行うことの利点や注力している取り組みを教えてください。
A

八代で仕事をしている大きな強みは、単にイグサが近くにあるということだけではありません。
素材、生産、加工に関する情報や技術、長年現場に携わってきた人の経験など、この地域で時間をかけて蓄積されてきたものに日常的に触れることができます。インターネットや資料だけでは得ることのできない、現場の中にある濃密な知識です。
現在は、そうした環境を活かしながら、イグサを単なる敷物の材料としてだけではなく、一つの植物、一つの「素材」として改めて見直しています。さらにイグサだけに限定せず、さまざまな植物や素材が持つ性質そのものにも目を向けています。形やデザインを変えるだけではなく、素材そのものを違う角度から捉え、新しい用途や価値につなげる取り組みも進めています。
八代には、長い年月の中で蓄積されてきた素材や技術、知識があります。それらに触れられる環境を、自分たちのものづくりにどう活かしていくか。その部分には、まだ多くの可能性があると感じています。

MY STORY

ブランド価値を高め、時代に合わせた変化で地域に貢献する未来像

Q今後、どのような目標を掲げ、会社を継続・成長・発展させていきたいとお考えですか?
A

これから長期的に会社を成長させていく上で、特に重要だと考えているのが「ブランド価値」です。素晴らしい技術を持っていても、その価値が相手に伝わらなければ他社との違いを明確にすることはできません。他にはない技術や考え方を持ち、それがきちんと認識されていれば選ばれる理由になりえます。
他社の模倣をするのではなく、私たちがこれまで培ってきた強みをさらに磨き、「村上産業だからこそ選ぶ」と言っていただける存在になることが目標です。
そうした仕事を積み重ねることで会社の価値が高まり、扱う素材の価値も高まり、その成果を農家や地域にも還元していける。そういう関係を長くつくっていければと考えています。

QAIの台頭など先行きが不透明な激動の時代において、どのような経営姿勢で臨まれますか?
A

現代は変化のスピードが非常に早く、近年ではAIの登場によってビジネスのあり方も大きく変わろうとしています。
ただ、どのような時代が来ても、変化を過度に恐れる必要はないと思っています。
新しい技術が出てくれば必要に応じて取り入れればいいですし、社会やニーズが変われば、会社のやり方も変えていけばいい。
具体的な手法や事業の形は、これからも時代に合わせて変化していくと思います。
一方で、新しいものを取り入れるだけでは、自分たちらしさにはならないとも思っています。自分たちの手元に何があるのか。それをどこまで深く理解しているのか。そこから、自分たちにしかできないものをつくれるのか。その部分は、これからより重要になるのではないでしょうか。
AIによって多くのことが簡単にできるようになるほど、平均的なものをつくるだけでは違いが見えにくくなっていくと思います。
だからこそ、素材や技術、これまで積み重ねてきた知識を深く掘り下げながら、自分たちなりの視点を持って新しい価値をつくり続けたい。時代に合わせて変わりながらも、他と同じではないものを生み出せる会社でありたいと考えています。

MY STORY

知識と経験を重ね、自分にしかない個性を育てる

これからは、AIの進化などによって社会が大きく変わり、これまで以上に一人ひとりの個性や強みが大切になる時代です。
周りに合わせることも必要ですが、自分にしかない考え方や感性も、大切にしてほしいと思います。知識や経験を積み重ねながら、自分らしさを育てていくことが大切だと思います。

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